男子寮に引っ越す事になった。朝から始めて夕方には全て引っ越しは完了し、新居で休もうと部屋へ向かう。部屋は建物の2階なので階段を上ると、踊り場があって、壁に小さな鏡がかけてある。はて?何故こんなところに鏡が?と思い、覗き込むと鏡には女の人が…。ゆ、幽霊っ!?びっくりして振り向くと、何て事は無い、ある部屋のお客様が階段をのぼってきていただけだった。男子寮と言えば女人禁制だ、というのは単なる思いこみだったようで、その女性は階段をのぼり一つの部屋に入って行った。そして、ふともう一度鏡を見るとまた女性の姿がうつっていた。あら、女性の出入りが激しいのね、と思いながら挨拶しようと振り返ると、その女性はいきなり長めの出刃包丁の様な物でボクの首のあたりを切り裂いた。嫌な感触がして、生温かい血が噴き出し、ボクはそのまま横向きに倒れた。倒れながら見た最後の光景はボクを殺した女の満たされた表情だった。

 気が付くと、ボクは男子寮への引っ越しを始めるところだった。なんだこれは。そうか。これは夢だ。リセットボタンの様なものを押されたのだろう。なんせボクの夢なんだし。つまり、殺されなければボクの勝ちなんだ、と、そういう設定だと理解した。そして、やがてさっきボクが殺された場面までストーリー(ボクは夢の中で自分が主人公のゲームをやっているような感覚だったのでストーリー)が進む。今度は殺されないぞと包丁を持った女性が現れた途端にボクは走って逃げた。すると女性も走って追いかけてくる。夢だとわかっていても怖い。怖い。怖い。ボクは走りには多少自信があったのだが、少しずつ追い付かれる。そして、また、嫌な感触が背中にし、ボクは倒れた。殺された事は無いけれども、とても嫌な気分になる。

 また、気が付くと、ボクは男子寮へ引っ越しを始めるところだった。

そうして何度も殺された。「何度も殺される」なんて、正にゲームの様な表現で少し虚しくなったりもしたのだけれど、それでも殺されたくはないので、ボクは必死でボクを殺そうとする彼女の事を分析しようとした。5回か6回か目に殺されて、やっと朧気ながら彼女の事がわかってきた。
第一目標はボクである事、ボクが見つけられないと手当たり次第に周りの人間を殺す事、ボクよりも少し足が速い事、実は結構美人である事、など。つまり、見つかったら終わり。

 ボクだって、そりゃ何度も殺されていればかくれんぼだってうまくなる。ただ運が良かっただけかもしれないが、何回目かのその時は調子良く逃げ回っていた。そうなると、当然、ボク以外の被害者が増える一方で、だんだん大阪の街は大騒ぎになっていった。街中の人間が一斉に逃げ出して、逃げる人間を片っ端から殺す彼女。かくれんぼ。

 そのうち警察も出動し、でも誰も彼女を止める事はできなくて、相変わらずボクは逃げ続けていた。彼女はとにかく人が大勢いる方へと進む。だから、その逆を行けば簡単に逃げる事ができた。しかし、ボクはだんだんつまらなさを感じていた。追われるスリルも飽きてきた。彼女の目を見たかった。ボクは殺されたかった。


 相変わらず寝覚めの悪い夢ばかり見ています。