幻の汽車

またしても猫を見つけてしまった。しかも逃げる元気も無い猫を。仕方無いので(内心にやにやしながら)ヘルメットに入れて連れて帰った。部屋へ連れて行き全身を拭いてやる。まだ「にゃー」とも言えないらしい。水をやるが飲まないのでスポイトで流し込んでやるとごくごく飲んだ。割と元気そうで安心した。
腹の上にのっけて遊ぶ。たまに「きしゃっ」とくしゃみをするのでその度に鼻水がボクの胸とか足にかかる。「コラー」と言うとびくっとなる。きょとんとした目でボクを見て、しばらくじっとしているのだけどまた「きしゃっ」とくしゃみをする。「ヤメナサーイ」と言うんだけど猫は前足で口を押えることはできないから仕方無いんだよね。
飯は食うかなとストックしている猫缶を取りに行く。名前は何にしようか、「きしゃ」でいいかな、汽車、とか考えながら中身をぐにぐに潰して、ついでに自分の餌もお盆にのせて部屋まで戻る。両手が塞がっているので足でがらっと襖を開けるとバランスを崩してお盆にのっていたコップが落ちた。それがまた運悪く近くにいた猫の足にあたり、お茶がかかってしまった。ゴメンヨーと謝ったんだけど、「とうとう本性をあらわしたわね。私をどうするつもり?太らせてから食べるつもりなんでしょー!」という目でボクをぎらぎらと睨みつけ、ささっと逃げ回る。しばらく鬼ごっこをしていたんだけどもとうとう猫は出て行ってしまった。嫌われてしまっては仕方無い。そんなつもりはなかったんだよ、と呟いてご飯の入った皿を外に出しておいた。すぐさま野良猫が群がってきた。はは。