朝、ハッと目覚めてカーテンを開けるとどんより曇り空。今日は電車で行かなくちゃなぁといつもより少し急いで支度をする。まだ雨は降っていないので自転車に傘を装着し、駅へ向けて出発。ペダルをこぎながら左ポケットに手を入れてキシリトール入りのガムを取り出そうとするが、ガムは包装紙だけで空になっていた。そこでボクはくるりと自転車の向きを変えてコンビニへと目的地を変更。素早くキシリトール入りのガムを購入し、また駅へ向けて出発した。5分後、駅に隣接する駐輪場に到着、そこから改札まで徒歩で更に5分かかり、全てタイルで埋め尽くされた駅構内を歩く事になるのだが、ここは注意が必要だ。なぜなら白いタイルに混じって所々に茶色いタイルが貼り付けてあるからだ。

詳しく説明しよう。ボクが通うこのT駅では皆なるべく白いタイルの上を歩かなければならないのだ。茶色いタイルを踏んでしまうとアベレージが下がっていく。アベレージは逐一記録され毎日切符売り場前の電光掲示板に表示される。1位になったからといって特にメリットは無いのだがここは意地とプライドの世界。皆が必死になって茶色いタイルを避けアベレージを競っている。アベレージは白いタイルの上を歩いた歩数÷総歩数で計算される。少しでも茶色いタイルを踏んでしまうとアウトとなるので注意してほしい。ちなみに規定歩数という物が存在し、それに満たない人はランキングに反映されない。規定歩数=今まで生きてきた日数×2であるのでボクの場合は365日×20.2年×2=約15000歩となる。1回で約200歩、往復で約400歩だから規定歩数に達する為には少なくとも1ヶ月は歩かなければならない。
ちなみにボクは現在アベレージ.982でランキングは2位。1位とは3厘差。もう少しで首位っ…!ここは勝負だ!ボクはわざと歩幅を狭め歩数を稼ぐ作戦に出た。しかしこの作戦はリスクも大きい。一度でも茶色いタイルを踏んでしまえばアベレージは一気に下がり10位圏外まで落ちてしまうだろう。しかしボクは敢えてこの作戦を選んだ…。勝利の為に……。ごくりと唾を飲み込んだボクは落ち着こうと買ったばかりのキシリトール入りガムを一つ口にポイと放り込み、初めの一歩をタイルの上へ踏み出すのだった……。




というのがボク(20歳)の今日見た夢でした。